核兵器禁止条約第1回締約国会議への日本のオブザーバー参加を求めます

2022.06.05

 核兵器禁止条約の第1回締約国会議が、6月21~23日にウィーンで開催されます。岸田首相は、核兵器禁止条約が「核兵器のない世界への出口ともいえる重要な条約」であると認めているにもかかわらず、この会議への参加に消極的な姿勢を続けています。
 この会議には非締約国もオブザーバーとして参加することができ、国連事務総長から全国連加盟国に招待状が届いています。議長国オーストリアも、核保有国を含めあらゆる国に開かれた会議としたいという姿勢を当初よりとっています。ノルウェーとドイツは、NATO(北大西洋条約機構)加盟国として米国の核兵器に依存する政策をとる国ですが、オブザーバー参加します。日本は、それでも参加しないというのでしょうか。
 日本政府は、締約国会議の前日に開かれる「核兵器の非人道性に関する国際会議」には参加すると表明しています。その政府代表団には、前例を踏襲し、被爆者2名が加わる予定です。被爆国として核兵器の非人道性を訴える立場からすれば、当然のことです。
 日本政府は、そのまま核兵器禁止条約の締約国会議にも参加すべきです。そして、核兵器の非人道性を訴え、核兵器廃絶という目標を共有していると表明し、今後の道筋について締約国との議論を深めるべきです。
 それすらしないということは、日本は「核兵器の禁止に反対である」というメッセージを世界に発することになります。
 ロシアによるウクライナへの戦争の中で、核兵器使用の可能性が現実のものになっています。今こそ核兵器は絶対に許されないという国際規範を強めなければいけないし、被爆国日本はその先頭にこそ立つべきです。その日本が核兵器禁止に反対するというのでは、これから核兵器の保有や使用に走ろうという国々の背中をむしろ押すことになります。
 首相はこの条約に「核兵器国が参加していない」ことをことさらに指摘していますが、これは、会議に参加しないことの理由にはなりません。日本政府はこれまで核兵器国と非核兵器国の「橋渡し」をすると言ってきました。核兵器禁止条約に集う非核兵器国との議論を深め、その結果を核兵器国にも伝えていくことこそ「橋渡し」でしょう。
 核兵器禁止条約締約国会議では、きわめて具体的な重要課題が議論されます。一つは、核兵器廃棄の検証のあり方です。核兵器の廃棄を多国間で検証する制度は世界には未だ存在しませんが、核兵器廃絶を達成するためには不可欠の課題です。朝鮮半島の非核化を実現するためにも不可欠です。このための議論を進めることは東アジアの安全保障上も有益であり、日本は積極的に貢献すべきです。
 もう一つは、世界各地で行われてきた核実験の被害者への援助や環境修復です。被爆者医療などの経験をもつ日本は、この分野で世界でもっとも知見を有する国の一つです。日本が貢献するのは国際的な責務であるともいえます。日本の市民社会は既に提言を発表していますが、政府もまたこのプロセスに積極的に関与し、貢献すべきです。
 締約国会議に参加しないということは、こうした重要課題への日本政府の関心の欠如を明らかにするものであり、日本に対する国際的信頼を著しく失墜させるものです。
 オブザーバー参加に申込締切はありません。首相は今からでも政治決断し、参加すべきです。国会では、現職国会議員の過半数がオブザーバー参加に賛成を表明しており、その支持は党派を超えています。国会議員の皆さんには、与野党の立場を超えて、岸田首相に対して会議参加の決断を迫るための行動をとってもらいたいと思います。
 そのためにも私たち市民一人ひとりが、各党の国会議員に働きかけていくことが必要です。電話、ファックス、メール、メッセージ、様々な手段で働きかけが可能です。この問題への対応を参議院選挙の争点にもしていきましょう。この議員ウォッチを、そのために大いに活用してください。

2022年6月5日

川崎哲
ICAN(核兵器廃絶国際キャンペーン)国際運営委員
ピースボート共同代表
議員ウォッチプロジェクト代表者