G7広島サミットへの国会質疑・政党の発言をまとめています

2023.07.17

今年5月、初めて原子爆弾が投下された広島で、G7サミットが開催されました。核軍縮に関する「広島ビジョン」も発出されましたが、核の非人道性や、核兵器禁止条約への言及はありませんでした。G7前後の今国会(第211回国会)での核兵器禁止条約についての国会質疑や、各政党からの談話をまとめています。
(7月10日時点)【情報は随時更新されます】

(「国会会議録検索システム」にて、「核兵器禁止条約」と入力し、検索を行いました。)ご紹介します。(引用は要旨)

 

5月17日
参議院 外交・安全保障に関する調査会 

塩村あやか議員(立憲民主党)
「核のない世界に向けては、G7広島サミットの議長国となる日本として、被爆の実相を世界に発信をするとともに、日本が核兵器国と非核兵器国との橋渡しをする一環として、今後、核兵器禁止条約締約国会議にオブザーバー参加をするなど、従来より踏み込んだ取組を期待したい」

平木大作議員(公明党)
「核不使用の法的規範性を強化するためにも、世界92か国が署名し68か国が締結をする核兵器禁止条約に対して、日本として背を向けるべきではない。今年11月末に開催をされる第二回締約国会議にオブザーバー参加し、核兵器国と非核兵器国との間の橋渡しの役割を追求していただきたい。」

岩渕友議員(日本共産党)
「核兵器の惨禍を人類が二度と起こさないとの誓いを示したいということで、G7の広島開催が決定した。唯一の戦争被爆国として、被爆の実相を知らせ、核兵器のない世界に向けて日本が果たす役割は大きい。・・・世界では、核兵器禁止条約への参加が広がっている。日本も条約に署名、批准をするべき。」

 

5月23日
参議院 外交防衛委員会  

小西洋之議員(立憲民主党)
「このG7で核兵器禁止条約について議論がされたのか。また、G7のうちのドイツはこの核禁条約の第一回締約国会議のオブザーバーで参加しているが、ドイツの方針や姿勢、取組などについて議論されたのか。」

林芳正外務大臣
「核兵器禁止条約は、核兵器のない世界の出口とも言える重要な条約であるが、その実現に向け、唯一の戦争被爆国として核兵器国を関与させるため、現実的かつ実践的な取組を進めていく。サミットでは、核兵器のない世界へのコミットメントを確認し、NPT体制を維持強化していくことが唯一の現実的な道であるという議論が行われ、その成果が広島ビジョンだ。なおドイツは、核兵器禁止条約第一回締約国会合にオブザーバー参加ているが、核抑止力を含むNATO加盟国の地位と相反する同条約に加入することはできないと明確に述べている。」

小西洋之議員(立憲民主党)
「核兵器禁止条約は国際条約であり、ドイツが批准することはないにしても、オブザーバー参加しているのは核禁条約の意義を認めているということだ。(条約について)一言も言及もなく、また、核廃絶に向けた具体的な決意あるいはその道筋というものの具体的な記載がないように思うが、その理由について答弁を。」

林芳正外務大臣
「御指摘の核禁条約を含め、文言調整過程は外交上のやり取りであり、回答を差し控えるが、広島ビジョンは、軍縮・不拡散に関する我が国やG7メンバーの、各G7メンバーの立場も踏まえたものだ。」

小西洋之議員(立憲民主党)
「G20バリ宣言の、核兵器の使用又はその威嚇は許されないという文言、意味よりも、この広島ビジョンは後退しているのではないか」

林芳正外務大臣
「・・・G7首脳広島ビジョンは、G20バリ首脳宣言を想起するに続く別の一文で、ロシアのウクライナ侵略の文脈における、ロシアによる核兵器の使用の威嚇、ましてやロシアによる核兵器のいかなる使用も許されないとの我々の立場、改めて表明している。」
 

5月23日
衆議院 本会議 

道下大樹議員(立憲民主党)
「広島ビジョンは、被爆者や核兵器禁止条約には言及せず、核抑止を肯定する、核兵器の必要性を強調するものだった。核軍縮につながるような具体策は全く示せず、核なき世界の実現が理想のまま凍結してしまったようなG7広島サミットだと言わざるを得ないのは非常に残念だ。立憲民主党は、政府が、核兵器禁止に向けた姿勢をより一層明確にし、核禁条約に関与することを強く求める。」

5月24日
衆議院 予算委員会

泉健太代表(立憲民主党)
「広島ビジョンに核兵器禁止条約の記載がなかったことは極めて残念。やはり、核禁条約にまずはせめてオブザーバー参加をやるべきだ、日本の姿勢として。我々はまさに日本が、間に立つ立場であっても、オブザーバー参加はできるじゃないかと考えている。」

岸田文雄内閣総理大臣
「核兵器禁止条約は核兵器のない世界を目指すという大きな理想に向けて、出口の部分に当たる大変重要な条約である。G7でも、核兵器のない世界を目指すことで一致できた。そして、その理想に向けてどう取り組むかについて、昨年8月、私がNPT運用検討会議の総会で明らかにしたヒロシマ・アクション・プランに基づいて取組を進めようということでも一致した。その中の取組を一つ一つ実行していくことが、核兵器国を核禁条約に近づけていく道にもつながると思っている。」

笠井亮議員(日本共産党)
「昨年のNPT再検討会議の最終文書では、核兵器の全廃を達成するという核兵器国の明確な約束の再確認と、核禁条約の発効と第1回締約国会議の開催を認識すると明記してある。これを受けた国連総会の日本決議では、NPT条約の完全かつ継続的な履行の重要性を再確認し、核禁条約の採択を認識し、条約の発効、第1回締約国会議開催に留意する、ここまで書いているが、広島ビジョンにはいずれも言及すらない。一体、この禁止条約について、これまでNPTの再検討会議や日本決議の中で国連でも合意したようなものについて、G7でも一致しているので言及しようと提起したのか。」

岸田文雄内閣総理大臣
「核兵器国を出口である核兵器禁止条約にどう近づけていくのか、これが唯一の戦争被爆国の責任だと思っている。そのための現実的な、具体的な取組をこの広島ビジョンにおいても示した。自らが核兵器禁止条約に参加するだけではなくして、核兵器国を核兵器禁止条約にどう近づけていくのか、唯一の戦争被爆国として責任を果たしていきたい。」

笠井亮議員(日本共産党)
「核兵器にしがみつく宣言を行ったことは、歴史的どころか、歴史に汚点を残す恥ずべきことである。議長国日本の岸田首相の責任が厳しく問われる。日本政府は、核抑止力論と決別をして、核兵器禁止条約に参加するように強く求める。」

櫛淵万里議員(れいわ新選組)
「G7文書で核兵器が防衛のために役割を果たすと核抑止力がアピールされたことは極めて問題であり、それは被爆地への冒涜、核廃絶に真っ向から反するものである。核兵器禁止条約と被爆者の文字もない。これは、理想とか出口とかという問題ではない。核兵器禁止条約は、核廃絶に向けた出口ではなくて入口。その認識を改めていただきたい。」

5月25日
参議院 外交防衛委員会 

羽田次郎議員(立憲民主党)
「NPT体制の強化、維持というのは重要なことだと思う反面、唯一の戦争被爆国という特殊な立場を考えれば、核兵器禁止条約の締約国会議にオブザーバー参加することも何ら矛盾しないのではないかと思う。この締約国会議第2回目が行われるが、それに参加するというような意向はあるのか。」

林芳正外務大臣
「核兵器禁止条約は核兵器のない世界へ出口と言える重要な条約だが、同条約には核兵器国が一か国も参加していない。我が国は、唯一の戦争被爆国として、核兵器国を関与させるということを努力していかなければならない。広島ビジョンを強固なステップ台として、核兵器国の関与を得る努力を継続し、ヒロシマ・アクション・プランの実行を通じて、現実的で実践的な取組を継続、強化していきたい。」

5月25日
衆議院 本会議 

櫛淵万里議員(れいわ新選組)
「…防衛能力を拡大し、さらには核抑止の拡大や核シェアリングが進んでしまえば、日本を含む北東アジアが核軍拡競争の新たな火種の地域になりかねない。昨年参加した核禁条約の第一回締約国会議では、NATO加盟国の議員から、日本で核共有の議論があるが、…押しつけられた側には何の権限も与えられないという声があった。平和憲法と非核三原則を持ち、唯一の戦争被爆国である日本が、国の確かな安全保障と、地域の平和と安定に貢献できる道は何か。アメリカに追従するだけではなくて知恵と力を出し合い、国会で真剣な議論を尽くし、国民の命と尊厳を守るために、私は、あらゆる努力と行動をしていく決意である。」

5月31日
衆議院 外務委員会 

篠原豪議員(立憲民主党)
「核兵器禁止条約は、NPTが核保有国に課した核軍縮義務を誠実に履行させるものであって、核抑止を真っ向から否定するものと決めつけることなく、排除するものではないと考える。・・・核保有国と非保有国との対話を主導するというのであれば、原爆投下を肯定する世論もアメリカにはあるから、そういった米国と同じである必要は日本は全くないので、核禁条約の締約国に積極的にアプローチをしていただきたい。」

林芳正外務大臣
「核兵器廃絶決議を毎年国連に提出し、核兵器国や核禁条約締約国を含む様々な立場の国の支持を得て採択されてきていることにも示されているとおり、従来から様々な立場の国との間で核軍縮に関する対話を深めるべく取り組んできている。軍縮・不拡散イニシアティブ(NPDI)は、核禁条約締約国を含む十二か国で構成されており、NPT運用検討会議に作業文書を提出するということで現実的かつ実践的な提案を行っている。」

篠原豪議員(立憲民主党)
「核禁条約とNPTが核軍縮に向かって提携する余地は幾らでもあるし、日本政府がその先頭に立つなら、日本では国民の多くがそれを支援すると思う。」

吉良州司委員(無所属)
「日本が核禁条約に署名をする前段として、少なくともオブザーバー参加、最終的な出口は、核廃絶である。しかし、日本の周辺には軍事力が強大で核保有国である国々が存在するため、米国の核の傘を利用させてもらうので、当面は核保有国による核保有、そして核保有国が提供する核抑止を認める。ただ、それは暫定的なもので、究極の出口に至るまでの間ということで核禁条約へ署名するなりオブザーバー参加することは、基本的な政府方針とやはり相反するものなのか。」

林芳正外務大臣
「核禁条約は、核兵器のない世界への出口とも言える重要な条約である。この点、厳しい現実を直視し、国の安全保障を確保しつつ、核兵器のない世界という理想に近づけていくこと、これは決して矛盾するものではないと考えている。ただし、核禁条約には、核兵器国が一国も参加しておらず、いまだにその出口に至る道筋が立っていない。こうした状況を踏まえ、我が国は、唯一の戦争被爆国として、核兵器国を関与させるように努力していかなければならないと思っており、広島ビジョンを強固なステップ台とし、核兵器国の関与を得るべく努力を継続しつつ、ヒロシマ・アクション・プランの下での取組を一つ一つ実行していくということで、現実的で実践的な取組、これを継続、強化していくことが重要。」

吉良州司議員(無所属)
「今大臣がおっしゃったことは、核兵器禁止条約に入っても、核兵器保有国の関与を促していくことは私はできると思う。やはり唯一の戦争被爆国として、それを言う権利があるから。」

政党談話

立憲民主党

「…G7初となる核軍縮に関する独立文書「広島ビジョン」を歓迎しつつも、立憲民主党は、日本政府が核兵器禁止に向けた姿勢をより一層明確にし、核兵器禁止条約に関与することを求めます。また立憲民主党は、国際社会におけるNPT体制の堅持、CTBTの発効、米露の核軍縮に加えた中国の核軍縮、透明性の向上、そして北東アジアの非核化を目指し、国際的な努力を続けてまいります。」

日本共産党

「「核抑止力」論を公然と唱える一方、世界の92カ国が署名し、すでに国際法としての地位を確立している核兵器禁止条約を無視する姿勢をとったことに、失望と批判が広がっている。…「核抑止力」論の根本的な見直しと、核兵器禁止条約に正面から向き合う姿勢が、G7諸国に強く求められている。」

社民党

「被爆地広島でのG7開催は核廃絶の前進が期待されたが、核抑止力を肯定し、さらには武器供与など戦争拡大への会議となった。広島ビジョンでは、核兵器禁止条約への言及がなく、さらに、抑止力として核保有を正当化するものとなっている。唯一の戦争被爆国として、そして議長国として核廃絶に向けた動きを先導できず、広島開催は単なる政治ショーとなった。被爆当事者らを失望させた岸田首相の責任は極めて大きい。」