【ルポ】大学生が埼玉県加須市議会へ「核兵器禁止条約に署名・批准を求める請願」を提出しました

2021.12.28

今年の市議会9月定例会に向けて、埼玉県加須市在住の大学生、青木秀介さんが、ご自身が住む加須市議会に対して「核兵器禁止条約に署名・批准を求める請願」を提出しました。残念ながら総務委員会、本会議ともで否決となってしまいましたが、青木さんのお言葉とともにルポとしてまとめましたのでご覧ください。 

提出まで

青木さんが通う大学で、議員ウォッチプロジェクトの代表者である川崎哲の授業を受けたことがきっかけで、今回地元加須市に対してアクションを起こすことを決めたとのこと。

まず地元選出の国会議員に対して面会をしようとしたがうまくいかなかったため、直接市議会に働きかけることを決定。

紹介議員となってもらうために各会派に声をかけたが、自公系保守派は反対、立憲系は昨年12月に加須市議会で、自公の反対で「核兵器禁止条約に署名・批准を求める意見書」が否決されていたため、紹介議員の引き受けを却下。そのため共産議員の協力を経て開始。

請願の起草と署名集めを共産党議員にお願いし、ご自身では意見陳述などに奔走された。署名は248名分も集まった。

川崎哲も請願代表者に加わり、共産党加須市議会議員の小坂徳蔵氏を紹介議員として、8月25日に議会に提出。

9月15日に加須市総務委員会で、意見陳述

青木さんより

「若者が、自ら議場にて自身の意見を述べに来るということで、党派を越えて、委員全員がこちらの話に耳を傾けて頂いたように思えます。というのも、紹介議員からではなく、請願者代表自らが意見を議場で述べるのは、加須市議会の歴史の中でも初めてのことだったそうです(コロナ対策のため委員会の段階から本会議場で行われていたとのこと)。

また、こうした若者が意見陳述を行うということが広まったのか、加須市平和委員会の方など日頃より反核運動に携わっている市民の方々にも傍聴席にまで足を運んでもらうこととなりました。」

自公派の議員からは、「NPT体制や核の傘は現在も機能しているのではないか」、「北朝鮮や中国が挑発行為を続け、核兵器保有国がこの条約に参加していない中で、日本だけが署名・批准するのは乱暴ではないか」といった質問があったが、青木さん曰く「直接登壇して議員と相対したこと、それによって議員からも質問があったことに意義を感じた」とのこと。

結果は賛成3名(立民1・共産2)、反対5名(自民系4・公明1)で否決となってしまったが、大きな反響があったそうだ。10月1日の本会議が残っているので、そこでの採決を最後まで見守りたい。

10月1日 加須市議会定例会本会議での採決

賛成討論:小坂議員(本人のホームページに記載あり)

反対討論:吉田健一議員(自民党系保守議員)

採決:賛成6(共産4、立憲2)、反対22で否決

反対票の中には公明党議員4名も含まれており、これは禁止条約への参加に意欲を見せる党の方針に背いたことになると青木さん。

核政策に対する理解は進んだ様子だったそうだ。全米市長会議において、バイデン大統領に、米国の核兵器禁止条約への署名・批准が促されたという一件は、保守系議員たちにとっても意外であったらしい。また反対討論を行った吉田議員も「核兵器禁止条約に署名・批准するのは、『まだ』時期尚早」ということで、諸々の条件が整えば、署名・批准しても良いよという裏返しとも取れるかもしれない。総じて以前よりも歩み寄りが見られたという。

まとめ

今回の一連の活動に対する青木さんからのコメントは以下の通りだ。

「請願活動は、意外と孤独だった。今回一人だったのもあるが、グループで活動している方々も、周りからの揶揄もあり、なかなか快く活動出来ないのではないかと思う。

また地方の原水協とも手を取り合っていく事が大事だと感じた。この核兵器廃絶運動は、議員ウォッチだけの問題ではなく、70年間この運動に携わってきた全ての人々の思いでもあるからである。

今回の請願を通して、私達のような数少ない若者が声を上げ続けることの意味を、このニュースを見ている皆様にも考えてもらいたい。

メディアからはU30ともてはやされ、ネット上では誹謗中傷の嵐に吹かれ…こうした相克の中で、核兵器廃絶を叫ぶことにどのような意味があるのか?環境問題に対する若者の行動については食いつくメディアであるが、こうした日本国が主導権を握るべきである核廃絶運動に、なかなかスポットが当たらないのはなぜなのか?請願活動は就職活動やその先の人生に不利なのか?お金にならない話題だからなのか?

こうした言葉を、少なからず自分にもかけられた。今回の経験から日本において「声をあげる」ことの不便さを知った。

しかし、大学の授業をきっかけに自分1人でもここまでできたのだ。広島長崎にゆかりのない人でも、核廃絶は自分の住む日本の問題であり、地元の議会から運動の潮流を高めていくことは非常に重要だ。今後は今回の件を発信すると同時に、市内では次の定例会に向けて、今回この内容の請願が否決されたことを含めてアピールを続けていきたい。」

なお今回の青木さんの活動は東京新聞しんぶん赤旗にて取材され掲載されたのでこちらも合わせてご覧ください。

請願の原本

PDF版はこちら

9月15日意見陳述の発言はこちら